この記事の監修者
水野 謙太
西新井みずの皮膚科クリニック 院長
埼玉医科大学卒業。東京慈恵会医科大学、自治医科大学附属さいたま医療センター、皮膚科・美容皮膚科クリニックなどで研鑽を積む。自治医科大学附属さいたま医療センターでは形成外科にも従事し、外科的手技を含めた診療経験を重ねる。現在は西新井みずの皮膚科クリニック院長を務める傍ら、東京慈恵会医科大学葛飾医療センターにて非常勤医師として皮膚外科手術の指導にも携わっている。 日本専門医機構認定 皮膚科専門医 所属学会:日本皮膚科学会,日本美容皮膚科学会,日本臨床皮膚科医会,日本臨床皮膚外科学会,日本小児皮膚科学会
顔の脂漏性皮膚炎は、鼻の脇・眉間・額の生え際など皮脂分泌の多い「Tゾーン」に、赤みやかゆみ、フケのような皮むけ(鱗屑)がくり返し出やすい慢性の肌トラブルです。「鼻の脇がいつも赤い」「ファンデが粉をふく」「治ったと思ってもまた出る」――そんなお悩みは、ニキビや乾燥肌ではなくこの状態が関係していることがあります。この記事では、出やすい部位と症状、原因、皮膚科での治療、毎日の正しいスキンケアや誤ケアの注意点までを医師監修でわかりやすく整理します。
本記事は脂漏性皮膚炎に関する一般的な情報提供を目的としており、医師による診断・治療に代わるものではありません。赤み・かゆみ・ジュクジュクなどの症状がある場合や、セルフケアで改善がみられない場合は皮膚科専門医にご相談ください。
顔の脂漏性皮膚炎とは
脂漏性皮膚炎は、皮脂腺が多く皮脂分泌のさかんな部位に起こる慢性・再発性の湿疹です。頭皮に多いことで知られますが、顔は頭皮に次いで好発する代表的な部位です。皮膚に常在するマラセチア菌(カビの一種)と過剰な皮脂、肌のバリア機能の低下などが複雑に関わって炎症が生じると考えられています。
特徴は、左右対称に近い形で、皮脂の多い部分にくり返し出ること。良くなったり悪くなったりを季節やコンディションに応じて繰り返しやすく、「乾燥肌」「敏感肌」「治りにくいニキビ」と思い込んで自己流ケアを続けているケースも少なくありません。気になる方は、まず脂漏性皮膚炎の基礎知識(about)もあわせてご確認ください。
症状が出やすい部位(鼻の脇・眉間・生え際・眉・耳)
顔のなかでも皮脂腺が密集する場所に集中して現れます。下の早見表で、ご自分の気になる部位と照らし合わせてみてください。
| 部位 | 出やすい症状の特徴 |
|---|---|
| 鼻の脇(鼻唇溝) | 顔で最も皮脂が多く、初発しやすい部位。赤みと細かい皮むけ、テカリを伴いやすい |
| 眉間・眉 | 毛包が密集し炎症が起こりやすい。眉毛にフケ状の鱗屑が付着することも |
| 額・生え際 | 頭皮の症状と連続して広がりやすい。生え際のかゆみ・赤みが目立つ |
| 耳・耳の後ろ | 見落とされやすいが好発部位。かゆみ、皮むけ、ジュクジュクすることも |
| あご・口まわり | 比較的少ないが、男性のヒゲ周辺に出ることがある |
これらの部位が左右対称ぎみに、同じところでくり返す場合は脂漏性皮膚炎の可能性があります。一方、頬や口周りに広がる赤み、特定の化粧品でだけ悪化する場合などは別の皮膚疾患のこともあるため、症状の見分け方(symptom-check)も参考にしてください。
顔の脂漏性皮膚炎の主な症状
- 赤み(紅斑):鼻の脇や眉間がいつも赤い、ぼんやり広がる
- 皮むけ・鱗屑:細かいフケのような皮が浮く、ファンデが粉をふく
- かゆみ:強くないことも多いが、こすると悪化しやすい
- テカリ・ベタつき:皮脂が多く、化粧くずれしやすい
- ヒリつき・敏感さ:化粧品がしみる、突っ張る感じ
かゆみが強くない分、「乾燥」「肌荒れ」と自己判断しがちですが、保湿だけでは炎症が落ち着かないのが特徴です。症状が長引く・くり返す場合は、自己流ケアを続ける前に皮膚科での確認をおすすめします。
顔に脂漏性皮膚炎が起こる原因
脂漏性皮膚炎は単一の原因ではなく、複数の要因が重なって起こると考えられています。主な3つを整理します。
1. 過剰な皮脂
顔の皮脂腺は密度が高く、特にTゾーンに集中します。皮脂はマラセチア菌の栄養源となるため、皮脂が多い環境は炎症の素地になりやすいと考えられています。皮脂は「量」だけでなく「質」も関与するとされます。
2. マラセチア菌(皮膚常在菌)
マラセチア菌は誰の肌にもいる常在菌で、皮脂を分解して遊離脂肪酸を生み出します。この遊離脂肪酸が肌のバリアを刺激し、炎症の引き金になると考えられています。重要なのは「菌がいること自体」ではなく、菌に対する個人の反応のしやすさです。マラセチア菌の役割は原因と対策(cause)でさらに詳しく解説しています。
3. 生活習慣・環境要因
- ストレス・睡眠不足:皮脂分泌や免疫バランスに影響しやすい
- 食生活:脂質・糖質の多い食事、アルコール、ビタミンB群の不足が関係するとされる
- 季節・乾燥:冬の乾燥や季節の変わり目に悪化しやすい
- 紫外線・摩擦:刺激がバリア機能を低下させ、悪化要因になりうる
- 誤った洗顔:洗いすぎが皮脂の過剰分泌を招くことも
ホルモンバランスの変化(思春期・月経周期・更年期など)も影響することがあります。
皮膚科での治療
顔の脂漏性皮膚炎は、まず皮膚科で炎症を抑えることが基本です。自己判断で市販薬を長く使い続けるより、適切な診断と外用薬の選択が回復への近道になります。代表的な治療は次のとおりです。
| 治療の種類 | 役割・特徴 |
|---|---|
| 抗真菌外用薬 | ケトコナゾールなど。マラセチア菌の増殖を抑え、再発予防にも用いられる |
| ステロイド外用薬 | 急性期に炎症をすばやく抑える。顔では弱め~中等度を短期間使うのが一般的 |
| タクロリムス軟膏 | 再発を繰り返す場合などに用いられ、皮膚萎縮などのリスクが比較的低いとされる |
| 生活指導・スキンケア | 薬と並行した洗顔・保湿・生活習慣の見直しで再発予防をめざす |
薬の種類や使い方は症状や部位によって異なります。顔はステロイドの影響が出やすい部位のため、必ず医師の指示に沿って使用してください。治療の進め方は脂漏性皮膚炎の治し方(sebderm-cure)で詳しく解説しています。市販薬で対処を検討する場合は市販薬の選び方(otc-medicine-sebderm)もご確認ください。
正しいスキンケア(洗顔・保湿・日焼け止め)
治療と並行して、毎日のスキンケアで肌の環境を整えることが再発予防につながります。ポイントは「やさしく・適度に・刺激を避ける」ことです。
洗顔
- 朝晩2回、32~34度のぬるま湯でやさしく。熱いお湯は避ける
- 低刺激性の洗顔料をよく泡立て、こすらず泡で包むように洗う
- 皮脂が気になっても1日3回以上は洗いすぎ。皮脂の過剰分泌を招きやすい
保湿
- セラミドやヘパリン類似物質などバリアを補う成分がなじみやすい
- 油分の多すぎるこってりしたクリームは、症状によっては避けたほうがよい場合も
- 洗顔後はできるだけ早く保湿し、乾燥による刺激を防ぐ
日焼け止め
- 紫外線は悪化要因になりうるため、低刺激・ノンコメドジェニックなど肌負担の少ないタイプを選ぶ
- こすらず塗り、帰宅後はやさしくオフする
合う・合わないには個人差があります。症状が強い時期に新しい製品を試すのは避け、不安があれば医師に相談しましょう。日々のケアの考え方は原因と対策(cause)でも紹介しています。
メイク・化粧品の注意点
- 症状が強い時期はメイクを控えめにし、肌を休ませる
- 使う場合は低刺激・オイルフリーなどの製品を選ぶ
- 厚塗りやくり返しの塗り直しによる摩擦・刺激を避ける
- 帰宅後は速やかにやさしくクレンジングし、処方薬がある場合は医師の指示どおりに塗布する
- クレンジングはこすらない。落ちにくいメイクは肌負担になりやすい
やってはいけない誤ケア
良かれと思って続けたケアが、かえって症状を長引かせることがあります。あるアンケート調査では、診断を受けた方の約8割がセルフケアを試みていたという結果もあり、誤ケアは決して珍しくありません。
- 洗いすぎ・ゴシゴシ洗い:皮脂を取りすぎ、かえって過剰分泌や刺激を招く
- 過剰な保湿・油分の塗りすぎ:マラセチア菌の栄養になりやすい場合がある
- アルコール配合の拭き取りや刺激の強い製品:バリア機能を低下させうる
- 他人の体験談やうわさのケアをそのまま真似る:肌質や原因は人それぞれ
- 市販ステロイドの自己判断による長期使用:顔では特に注意が必要
「ニキビだと思ってアクネケアを続けていた」「乾燥だと思って油分を足していた」――こうしたすれ違いも起こりがちです。詳しくは脂漏性皮膚炎の誤ケア(gocare)をご覧ください。
受診を検討すべきサイン
次のような場合は、自己流ケアを続けず皮膚科の受診を検討してください。
- 赤み・かゆみ・皮むけが2週間以上続く、または何度もくり返す
- ジュクジュクする、にじむ・出血する
- 市販薬やセルフケアで改善がみられない、あるいは悪化する
- 範囲が広がってきた、痛みやひどいかゆみで日常生活に支障がある
- ニキビ・乾燥・かぶれなど、何が原因か自分で判断できない
自分の状態を整理したい方は、セルフチェック(約1分・6問)もご利用ください。チェック結果は診断ではないため、気になる症状は医療機関でご相談ください。
よくある質問
Q1. 顔の脂漏性皮膚炎は自然に治りますか?
軽い場合は生活習慣やスキンケアの見直しで落ち着くこともありますが、慢性・再発性の性質があり、良くなったり悪くなったりをくり返しやすい状態です。長引く・くり返す場合は皮膚科で相談し、適切なケアを続けることが大切です。
Q2. 鼻の脇の赤みがずっと消えません。脂漏性皮膚炎でしょうか?
鼻の脇は顔で最も皮脂が多く、脂漏性皮膚炎が出やすい部位です。ただし赤みの原因は酒さやニキビ、かぶれなど他の疾患のこともあります。自己判断せず、皮膚科で確認することをおすすめします。
Q3. ニキビや乾燥肌との違いは?
脂漏性皮膚炎は皮脂の多い部位に赤み+フケ状の皮むけが左右対称ぎみにくり返すのが特徴です。ニキビは毛穴の詰まりや炎症、乾燥肌は皮膚のうるおい不足が中心で、ケアの方向性が異なります。見分けにくい場合は症状の見分け方(symptom-check)も参考にしてください。
Q4. メイクはしてもいいですか?
症状が強い時期は控えめにし、する場合は低刺激・オイルフリーの製品を選びましょう。摩擦を避け、帰宅後はやさしくクレンジングします。処方薬がある場合は医師の指示に従って使用してください。
Q5. 洗顔は1日何回が適切ですか?
基本は朝晩の2回です。皮脂が気になっても洗いすぎは逆効果で、皮脂の過剰分泌や刺激を招くことがあります。ぬるま湯でやさしく洗うことを心がけてください。
Q6. 市販薬で治してもいいですか?
軽い症状では市販薬で様子をみる選択肢もありますが、顔は刺激や副作用が出やすい部位です。改善がない・くり返す場合は皮膚科を受診しましょう。選び方は市販薬の選び方(otc-medicine-sebderm)を参考にしてください。
Q7. 再発を防ぐにはどうすればいいですか?
正しい洗顔・保湿、紫外線・摩擦などの刺激を避けること、睡眠やストレス・食生活など生活習慣を整えることが基本です。症状が落ち着いた後も、医師の指示に応じた維持ケアを続けることが再発予防につながります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法・製品の効果を保証するものではありません。医師による診断・治療に代わるものではないため、症状や経過については皮膚科専門医にご相談ください。