妊娠・出産と脂漏性皮膚炎の関係性

この記事の監修者

吉田美奈子

吉田美奈子

青山Fusion Clinic 院長

聖マリアンナ医科大学医学部を卒業。 東京医科大学病院小児科コース修了後、都立広尾病院で小児科医として従事。 出産を機に、都内クリニックや産業医として経験を積む。 その後、内科小児科クリニックの院長を経て、 2024年2月、内科・皮膚科・美容内科・美容皮膚科専門の『青山Fusion Clinic』を開院。 幅広い年代の健康と美に寄り添う。

かゆみ2025.09.25 公開 / 2026.06.25 更新

この記事の結論

  • 妊娠中はエストロゲンとプロゲステロンのバランスが変動し、皮脂を分泌するプロゲステロンの影響などで脂漏性皮膚炎が起こることがあるとされています。
  • 妊娠初期・中期・後期・出産後で症状の出やすさには傾向と個人差があり、出産後は疲労や睡眠不足による免疫低下も要因になりやすいとされています。
  • 妊娠中は自己判断で薬やシャンプーを選ばず、不安な症状があれば皮膚科を受診し、産婦人科など他科とも連携して医師に相談してください。

こんな人に

  • 妊娠中・出産後に頭皮や顔の赤み・かゆみ・フケが気になる方
  • 妊娠の時期によって症状がどう変化するか知りたい方
  • 妊娠中でも使えるシャンプーや対処法を医師に相談する前に知りたい方
  • 育児の疲れやストレスと肌トラブルの関係が気になる方

妊娠・出産での体の変化

この章の要点

妊娠中は疲れやすさや栄養の欠乏が起こりやすく、出産後は女性ホルモンの急激な変化からマタニティブルーズと呼ばれる状態になりやすいとされています。皮膚の変化は心の状態と密接に関連し、産婦人科や精神科との連携も含めた総合的なケアが大切とされています。

妊娠による体の変化

妊娠期間中、母体には様々な変化が起こります。具体的には、疲れやすい、栄養が足りなくなり欠乏症になりやすいなど、妊娠期間中にも目まぐるしく体に変化が生じます。

また出産後は、女性ホルモンの急激な変化からマタニティブルーズと呼ばれる状態になりやすく、情緒が不安定になり、涙もろくなったり、気分が落ち込んだり、不安を感じやすくなったりします。これが長引くと産後うつに移行することもあります。

先生

皮膚の変化は心の状態と密接に関連しています。不安な症状があれば皮膚科を受診していただき、同時に産婦人科や精神科との連携も行いながら総合的なケアを行うことが大切です。
特に産後は育児で忙しく自分のケアが後回しになりがちですが、お母さん自身の健康が赤ちゃんのケアの基本になりますので、ご自身の体調管理も大切にしてください。

妊娠・出産と脂漏性皮膚炎の関係性

妊娠・出産と
脂漏性皮膚炎の関係性

この章の要点

エストロゲンは皮脂を抑制し、プロゲステロンは皮脂を分泌する作用を持つとされます。妊娠初期はプロゲステロン増加で皮脂腺が活発化、中期は安定しやすく、後期はエストロゲン増加で症状が出にくくなる傾向、出産後は疲労・睡眠不足による免疫低下が要因になりやすいと説明されています。

先生

前述した通り、妊娠するとさまざまな体の変化が起こります。特に脂漏性皮膚炎との関係性で注視したいのが、「エストロゲン」と「プロゲステロン」というホルモンで、エストロゲンは皮脂を抑制する作用を持ち、反対にプロゲステロンは皮脂を分泌する作用を持ちます。

妊娠中は、このホルモンバランスが変動することで、脂漏性皮膚炎を患ってしまうことがあるのです。

妊娠初期

妊娠初期(0~13週)は女性の体内でホルモンバランスが大きく変化する時期です。特にプロゲステロンの増加により、皮脂腺の活動が活発化することがあります。この皮脂分泌の増加が脂漏性皮膚炎の発症や悪化につながることがあります。

妊娠中期

妊娠中期(14~27週)になると、ホルモンバランスがある程度安定してきます。初期に比べてエストロゲンの急激な変動が落ち着き、プロゲステロンとエストロゲンのバランスが整うため、皮脂の過剰な分泌も緩和される傾向があります。そのため、妊娠初期に脂漏性皮膚炎が発症・悪化した場合でも、中期には症状が自然に軽減するケースが見られます。ただし、プロゲステロンの継続的な上昇により皮脂腺活動が維持されるため、完全に消失することは少ないです。また、妊娠中期は発汗量の増加や体温上昇などで頭皮環境も変化するため、個人差が大きいことを理解しておく必要があります。

妊娠後期

妊娠後期(28週以降)になると、エストロゲンは妊娠前の約50~1100倍に達し、プロゲステロンの分泌も最大になります。そのため個人差はありますが、皮脂由来の脂漏性皮膚炎の症状は発生しづらくなります。ただ、後期でも発汗量の増加、体形の変化による衣服の摩擦、出産に向けた身体的・精神的ストレスなどにより皮膚炎が悪化する可能性があります。

出産後

出産後はホルモンバランスの変化などによる要因よりも、授乳や育児による疲労・睡眠不足から免疫力が低下し、バランスが乱れて皮脂の過剰分泌を引き起こしやすくなります。また、育児の疲れやイライラなどのストレスも皮脂分泌を増加させる要因です。過剰な皮脂によりマラセチア菌が異常繁殖し、脂漏性皮膚炎の症状(赤み、かゆみ、フケ、ベタつきなど)が現れます。

脂漏性皮膚炎を完全に「完治」させることは難しいというのが現状です。
脂漏性皮膚炎はマラセチア菌や皮脂分泌、免疫反応など複数の要因が関わる慢性的な皮膚疾患であり、一時的に症状が改善しても再発することが多いためです。
一般的には男性の方が皮脂分泌量が多いため脂漏性皮膚炎にかかりやすいと言われていますが、女性も月経や妊娠など体の変化が激しいため、ネット上での発信量が少ないだけで悩んでいる人は多くいます。

先生

一度発症すると、ストレスや栄養不足など、さまざまな要因で再発してしまう人も多いらしいから、症状が緩和しても油断しないことが重要だね!

妊娠・出産後の女性が脂漏性皮膚炎で悩むこと

妊娠・出産後の女性が
脂漏性皮膚炎で悩むこと

この章の要点

妊娠中はミコナゾール硝酸塩配合シャンプーなどの安全性や、頭皮が乾燥しているのに脂漏性皮膚炎と診断されることへの疑問など、悩みが寄せられています。成分によっては注意が必要な場合もあるため、自己判断せず医師への相談がすすめられています。

質問

私は26週の妊婦なのですが、ひどい脂漏性皮膚炎に悩まされています。皮膚科は2カ所も受診して、それぞれ薬を処方してもらったのですが、どちらも効果がなくて本当に辛いです。特に頭皮のかゆみがとてもひどくて、かさぶたまでできてしまっています。
ネットで調べていたら「ミコナゾールシャンプー」という脂漏性皮膚炎に効く抗真菌シャンプーがあることを知りました。妊婦の私でも安全に使えるものなのでしょうか?それと、もし市販で買える効果的なシャンプーがあれば、ぜひ教えていただきたいです。本当に困っているので、何かアドバイスいただけると嬉しいです(>_<)

先生

それは辛いですね……。
ミコナゾールシャンプーは、ミコナゾール硝酸塩が配合されているシャンプーのことですね。ミコナゾール硝酸塩は抗真菌作用があるので、頭皮の真菌(マラセチア菌)に有効で、かゆみを抑えてくれる効果が期待できます!
ただミコナゾール硝酸塩は洗浄効果が強いものもあるため、かさぶたができている箇所にはしみてしまう可能性もあります。また成分によっては注意が必要な場合もあるため、低刺激で炎症を抑える成分が入ったシャンプーも選択肢に入れてみてください。

質問

現在、妊娠中なのですが加齢によって肌に合わなくなるのか、定期的に髪の分け目や生え際が荒れてしまい症状が改善しません。元々全身乾燥肌なのですが、いま妊娠中なのでより一層乾燥しやすくなっているのかもしれません。

不思議なのは、私の頭皮は全くオイリーな感じがしないことです。脂漏性皮膚炎なら頭皮がべたつくイメージがあるのですが、それでも脂漏性皮膚炎という診断で合っているのでしょうか?シャンプー選びにも困っています。

先生

シャンプーにこだわっているのは、大正解ですね。ただ今使っているシャンプーに「石油系界面活性剤」や「油分」が入っていると、脂漏性皮膚炎が悪化する可能性があります。
なぜなら、石油系界面活性剤は洗浄力が強く必要な皮脂まで洗い流してしまうため、乾燥肌の方だとより肌を乾燥させてしまい、炎症の元になってしまいます。
また保湿成分として油分が含まれている場合は、マラセチア菌の餌になってしまうので、その2点を満たしてしまっているシャンプーはおすすめできないですね……。

症状を改善するためには、医薬部外品のシャンプーで「抗菌・抗真菌作用」を持ち、かつ低刺激なものがおすすめです!

対処方法

この章の要点

シャンプーを変える、食生活を見直す、ストレスと睡眠不足に対処する、といった方法が挙げられています。とくに妊娠中はサプリでのビタミン過剰摂取が胎児に影響する可能性があるため摂取量の確認が必要とされ、改善しない場合は病院を受診して相談することがすすめられています。

症状を緩和するための方法は以下の方法が検討できます。

シャンプーを変える

抗菌・抗真菌作用のあるシャンプーに変えてみましょう。また抗炎症作用と、油分に頼りすぎない保湿成分が配合されているシャンプーかもチェックすると症状が緩和されやすい可能性があります。一般的な市販のシャンプーではなく、脂漏性皮膚炎のケアに配慮した製品を選ぶことが大切です。

食生活

食生活を見直しましょう。皮脂分泌を調整するビタミンB群(特にB2、B6)を含む豚肉、卵、大豆、ナッツ類を意識的に摂取しましょう。反対に、脂肪分や糖分の多い食事、ジャンクフードは皮脂分泌を増加させるため控えめにすることが大切です。また、十分な水分補給も皮膚の健康維持に欠かせません。注意点として、サプリメントだと特定のビタミンを摂りすぎてしまい、胎児に影響を及ぼす可能性があります。特にビタミンは水に溶けやすい水溶性(B群、C)と、油脂に溶けやすい脂溶性(A, D, E)があり、脂溶性は体内に蓄積されやすいため摂取量を確認する必要があります。

ストレスと睡眠不足

症状を改善させるためには、ストレス管理と質の良い睡眠が非常に重要です。ストレスや疲労は皮脂分泌を増加させ、バランスを乱して症状を悪化させます。軽いストレッチや深呼吸、安定期に入り動けるようになったらマタニティヨガや散歩など妊婦に適した方法でリラックスする時間を確保しましょう。また、質の良い睡眠は肌の回復に不可欠です。就寝前のブルーライト対策や快適な寝室環境づくりに努めることで、皮膚の炎症を抑え、免疫機能を高めることができます。

先生

妊娠するとさまざまなことに気を付けなくてはならなくなると思います。それがストレスになっている場合は、それが原因で脂漏性皮膚炎を招いている可能性もあるので、まずは周りの人に協力してもらい、環境を整えましょう。それでも症状が改善しない場合は病院を受診して先生に相談してみましょう。

ある意味、自分だけの体だと思わず、ひとりで抱え込まないことが改善への道かもしれません。

受診を考える目安

  • 赤み・かゆみ・フケなどが数週間以上続く、または繰り返す
  • 市販のケアで改善しない、または悪化する
  • 顔・耳・胸元など、頭皮以外にも症状が広がっている
  • 強いかゆみ・痛み・ジュクジュク(浸出液)などがある

よくある質問

Q. 妊娠中に脂漏性皮膚炎が起こるのはなぜですか?

A. 妊娠中はエストロゲン(皮脂を抑制)とプロゲステロン(皮脂を分泌)のバランスが変動するためとされています。とくに妊娠初期はプロゲステロンの増加で皮脂腺の活動が活発化し、発症や悪化につながることがあると説明されています。個人差があります。

Q. 妊娠の時期によって症状は変わりますか?

A. 妊娠初期はプロゲステロン増加で悪化することがあり、中期はバランスが整い緩和する傾向、後期はエストロゲン増加で皮脂由来の症状が出にくくなる傾向とされています。ただし発汗や摩擦、ストレスで悪化することもあり個人差が大きいとされています。

Q. 出産後に症状が出やすくなるのはなぜですか?

A. 出産後はホルモンの変化より、授乳や育児による疲労・睡眠不足から免疫力が低下し、皮脂の過剰分泌を引き起こしやすくなるためとされています。過剰な皮脂でマラセチア菌が繁殖し、症状が現れることがあると説明されています。

Q. 妊娠中にミコナゾールシャンプーは使っても大丈夫ですか?

A. ミコナゾール硝酸塩は抗真菌作用がありかゆみを抑える効果が期待できるとされますが、洗浄効果が強くかさぶた部分にしみる可能性や、成分によっては注意が必要な場合もあります。妊娠中は自己判断で使わず、必ず医師に相談してください。

Q. 頭皮がベタつかないのに脂漏性皮膚炎と診断されました。合っていますか?

A. 妊娠中は乾燥しやすく、ベタつきを感じにくいこともあります。診断や治療の判断は医師によるものであり、自己判断はできません。診断や使用中の薬・シャンプーに疑問がある場合は、自己判断せず担当の医師に相談してください。

Q. 妊娠中のシャンプー選びで気をつける点はありますか?

A. 石油系界面活性剤や油分が含まれると、乾燥肌では肌をより乾燥させたり、油分がマラセチア菌の餌になり悪化につながる可能性があると指摘されています。一般論として医薬部外品で低刺激なものが挙げられますが、使用前に医師へ相談してください。

Q. 妊娠中の食生活で注意することはありますか?

A. 皮脂分泌を調整するビタミンB群を含む食品を意識し、脂肪・糖分の多い食事は控えめにすることが挙げられています。ただしサプリでの過剰摂取は胎児に影響する可能性があり、とくに脂溶性ビタミンは蓄積しやすいため摂取量の確認が必要とされています。

Q. セルフケアで改善しないときはどうすればよいですか?

A. まず周囲の協力を得て環境を整えることがすすめられ、それでも改善しない場合は病院を受診して医師に相談することが大切とされています。ひとりで抱え込まず、皮膚科や産婦人科など医師に相談してください。本記事は診断・治療の代わりにはなりません。

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