この記事の監修者
吉田美奈子
青山Fusion Clinic 院長
聖マリアンナ医科大学医学部を卒業。 東京医科大学病院小児科コース修了後、都立広尾病院で小児科医として従事。 出産を機に、都内クリニックや産業医として経験を積む。 その後、内科小児科クリニックの院長を経て、 2024年2月、内科・皮膚科・美容内科・美容皮膚科専門の『青山Fusion Clinic』を開院。 幅広い年代の健康と美に寄り添う。
「40代後半から急に頭皮や顔の赤み・かゆみ・フケが気になりだした」「これまで使えていた化粧品が急に合わなくなった」——更年期世代の女性から、こうした肌の声をよく聞きます。その背景には、更年期に起こる女性ホルモン(エストロゲン)の低下と、それに伴う肌バリアや皮脂バランスの変化が関わっていると考えられています。この記事では、更年期と脂漏性皮膚炎の関係、女性ホルモンの変化が肌に与える影響、更年期に気をつけたいケアや生活習慣、やってはいけないこと、受診の目安までを整理して解説します。
この記事の結論
- 更年期に起こる女性ホルモン(エストロゲン)の低下は、肌バリアや皮脂バランスを揺らがせ、脂漏性皮膚炎の症状が出たり悪化したりしやすくなる要素のひとつと考えられています。
- 更年期になれば必ず発症するわけではなく、体質・生活習慣・環境など複数の条件が重なったときに症状が出やすくなると整理できます。
- やさしく洗ってしっかり保湿し刺激を減らすケアと生活習慣の見直しが土台となり、改善しない・悪化する場合は皮膚科や婦人科での相談がすすめられます。
こんな人に
- 40代後半〜50代で頭皮や顔の赤み・かゆみ・フケが急に気になりだした方
- これまで使えていた化粧品が更年期になって急に合わなくなったと感じる方
- ホルモンの変化と肌トラブルの関係を整理して知りたい方
- 更年期の脂漏性皮膚炎で皮膚科と婦人科のどちらに相談すべきか迷っている方
更年期と脂漏性皮膚炎の関係性
更年期(一般的に45〜55歳ごろ)は女性ホルモンの分泌が揺らぎながら減る時期で、皮脂・マラセチア菌・肌バリア・生活習慣が複雑に関わる脂漏性皮膚炎の条件に影響しうる要素のひとつと整理できます。必ず発症するわけではありません。
更年期とは、閉経をはさんだ前後約10年間(一般的に45〜55歳ごろ)を指します。この時期は卵巣の働きが徐々に低下し、女性ホルモンの分泌が大きく揺らぎながら減っていきます。ホルモンバランスの変化は、ほてり・発汗・気分の変動といった全身症状だけでなく、肌や頭皮のコンディションにも影響することが知られています。
脂漏性皮膚炎は、皮脂の多い部位(頭皮・髪の生えぎわ・小鼻のわき・眉間・耳のまわりなど)に、赤み・かゆみ・フケ・かさつきなどが出る慢性的な皮膚トラブルです。皮膚に常在するマラセチア菌と皮脂、肌バリアの状態、生活習慣などが複雑に関わって生じると考えられており、更年期のホルモン変化はこれらの条件に影響しうる要素のひとつと整理できます。
「更年期になると必ず脂漏性皮膚炎になる」というわけではありません。あくまで、ホルモンの変化が肌のゆらぎやすさを高め、もともとの体質や環境と重なったときに症状が出たり悪化したりしやすくなる、と捉えるのが現実的です。脂漏性皮膚炎そのものの基礎については脂漏性皮膚炎とはのページも参考にしてください。
更年期に症状が出やすい・悪化しやすいと感じる理由
更年期に肌トラブルが気になりやすくなる理由として、次のような要素が重なりやすい点が挙げられます。
- 肌バリアの低下:エストロゲンの減少により肌の水分保持力が落ち、乾燥や敏感さが進みやすくなると考えられています。バリアが弱まると外部刺激やマラセチア菌の影響を受けやすくなります。
- 皮脂バランスの変化:女性ホルモンが相対的に減ることで、男性ホルモンの働きが目立ちやすくなり、皮脂の分泌や質に影響しうると考えられています。
- ほてり・発汗:ホットフラッシュによる汗は頭皮や肌をムレやすくし、刺激となって不快感につながることがあります。
- 自律神経・睡眠の乱れ:更年期は睡眠の質が下がりやすく、ストレスもたまりやすい時期です。これらは肌の回復力に関わると考えられています。
脂漏性皮膚炎の発症メカニズム全般については脂漏性皮膚炎の原因もあわせてご覧ください。
女性ホルモンの変化と肌
肌のうるおいやハリ、バリア機能の維持に関わるとされるエストロゲンが減ると、乾燥しやすく刺激に弱くなり、皮脂とマラセチア菌のバランスも揺らぎやすくなります。生理周期や妊娠期など他のライフステージでもホルモンは肌に影響します。
女性ホルモンには、主にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があります。なかでもエストロゲンは、肌のうるおいやハリ、バリア機能の維持に関わると考えられているホルモンです。更年期にエストロゲンが減っていくと、肌側でも次のような変化が起こりやすいとされています。
うるおい・バリア機能の変化
エストロゲンの低下に伴い、肌の水分量や皮脂量のバランスが崩れ、乾燥しやすく・刺激に弱くなる傾向があると考えられています。バリアが弱った肌は、ちょっとした摩擦や成分にも反応しやすく、赤みやかゆみが出やすい状態になりがちです。
皮脂とマラセチア菌のバランス
脂漏性皮膚炎では、皮脂を栄養源にするマラセチア菌と肌のバランスが重要だと考えられています。更年期に皮脂の量や質が変わると、このバランスがゆらぎ、症状が出やすくなる場合があります。「乾燥しているのに脂っぽい」「Tゾーンや頭皮だけテカる」といった混合的な状態も、更年期の肌では珍しくありません。
生理・妊娠期との違い
女性ホルモンの変動は、生理周期や妊娠・産後など、更年期以外のライフステージでも肌に影響します。ライフステージごとのホルモンと肌の関係を整理した脂漏性皮膚炎と女性ホルモンのページでは、生理前・妊娠中・更年期それぞれの傾向をまとめています。顔(小鼻・眉間など)の赤みが気になる場合は顔の脂漏性皮膚炎のケアも参考になります。
更年期に気をつけたいケア
ゆらぎやすい更年期の肌は「やさしく洗って、しっかり保湿し、刺激を減らす」が基本です。頭皮は低刺激シャンプーでぬるま湯・指の腹でやさしく洗い、顔は摩擦を最小限にして早めに保湿。新しい化粧品は少量から試します。
更年期の肌はゆらぎやすいため、「強く落とす・刺激を足す」ケアより、やさしく洗って、しっかり保湿し、刺激を減らす方向のケアが基本になります。ここでは頭皮・顔それぞれのポイントを整理します。
頭皮のケア
- 洗浄力が強すぎるシャンプーは乾燥を招きやすいため、低刺激・アミノ酸系などマイルドな処方を選ぶ。
- ぬるま湯(38℃前後)で予洗いし、指の腹でやさしく洗う。爪を立ててこすらない。
- すすぎ残しはかゆみやフケの原因になりやすいので、生えぎわ・耳のうしろまで丁寧に流す。
- 洗髪は1日1回を目安に。洗いすぎは皮脂を奪い、かえって乾燥や皮脂の過剰分泌につながることがあります。
顔・肌のケア
- クレンジングや洗顔は摩擦を最小限に。タオルでゴシゴシ拭かず、押さえるように水分を取る。
- 洗顔後はできるだけ早く保湿し、肌の乾燥を防ぐ。
- 新しい化粧品は、いきなり顔全体に使わず少量から試す。更年期は今まで平気だった成分に反応することもあります。
- 赤みやかゆみが強いときは、刺激の少ないシンプルなアイテムに絞る。
自分の症状がどの程度かを把握したいときは、脂漏性皮膚炎セルフチェックやセルフチェックも活用してみてください。なお、市販のケアで改善しない・悪化する場合は自己判断を続けず、皮膚科で相談することが大切です(後述の「受診のサイン」を参照)。
生活習慣で肌を整える
ビタミンB群を意識しつつ糖質・脂質や甘いものの摂りすぎを控え、バランスのよい食事を心がけます。睡眠は質も意識し、軽い運動・入浴・趣味で気分転換を。極端な食事制限は避けることが大切とされています。
更年期の肌コンディションは、スキンケアだけでなく日々の生活習慣とも深く関わります。次のような点を無理のない範囲で意識すると、肌の土台を整える助けになると考えられています。
食事
- 皮膚の健康に関わるとされるビタミンB群(豚肉・レバー・卵・納豆・青魚など)を意識する。
- 糖質や脂質に偏った食事、甘いものの摂りすぎを控える。
- 大豆製品など、バランスのよい食事を心がける。極端な食事制限は避ける。
睡眠・ストレス
- 睡眠時間だけでなく「質」も意識し、就寝前のスマホやカフェインを控える。
- 更年期はストレスをためやすい時期。軽い運動・入浴・趣味などで気分転換をはかる。
- ほてりや発汗が強いときは、汗を放置せずやさしく拭き取り、ムレを防ぐ。
体調全般のつらさが強い場合は、肌のケアと並行して婦人科などで更年期そのものの相談をすることも選択肢になります。
更年期にやってはいけないこと
ゴシゴシ洗い・洗いすぎ、かきむしり、合わない化粧品を使い続けること、自己判断で市販薬を長期に使い続けること、過度な食事制限などは、かえって肌の負担や悪化につながりやすいため避けたい習慣です。
良かれと思った行動が、かえって肌の負担になることがあります。更年期の脂漏性皮膚炎で避けたいNGケアを整理します。
- ゴシゴシ洗い・洗いすぎ:皮脂やフケを落としたい一心で強く洗うと、バリアを傷め乾燥や悪化を招きやすくなります。
- かゆい部分をかきむしる:かくことで炎症が広がり、治りにくくなります。冷やすなどして刺激を減らしましょう。
- 合わない化粧品を使い続ける:「もったいないから」と刺激を感じる製品を使い続けると悪化の原因になります。
- 自己判断で市販薬を長期に使い続ける:症状に合わない薬を漫然と使うと改善が遅れることがあります。
- 過度な食事制限・極端な健康法:栄養の偏りは肌の回復力に影響しかねません。
避けたい習慣をまとめた脂漏性皮膚炎のNG習慣のページもあわせてご確認ください。
受診のサイン(皮膚科に相談する目安)
市販ケアを2〜4週間以上続けても改善しない、症状が広がる・ジュクジュクする・強いかゆみで眠れない、市販薬で悪化する・再発を繰り返すといった場合は、自己判断を続けず皮膚科への相談を検討してください。
脂漏性皮膚炎は慢性的で、自分のケアだけでは改善しにくいこともあります。次のようなときは、自己判断を続けず皮膚科への相談を検討してください。
- 市販のシャンプーやスキンケアを続けても、赤み・かゆみ・フケが2〜4週間以上改善しない。
- 症状が広がっている、ジュクジュクする、強い痛みやかゆみで眠れない。
- 顔や頭皮以外にも湿疹が広がっている、左右で大きく違うなど、別の皮膚疾患が疑われる。
- 市販薬を使っても悪化する、または再発を繰り返す。
更年期のホルモン症状そのものがつらい場合は、婦人科で相談することで体調全体が整い、結果的に肌のケアがしやすくなることもあります。脂漏性皮膚炎の治療の流れを知りたい方は脂漏性皮膚炎の治し方も参考にしてください。
受診を考える目安
- 赤み・かゆみ・フケなどが数週間以上続く、または繰り返す
- 市販のケアで改善しない、または悪化する
- 顔・耳・胸元など、頭皮以外にも症状が広がっている
- 強いかゆみ・痛み・ジュクジュク(浸出液)などがある
よくある質問
Q. 更年期になると必ず脂漏性皮膚炎になりますか?
A. 必ずなるわけではありません。更年期のホルモン変化は肌をゆらぎやすくする要素のひとつと考えられていますが、発症には体質・生活習慣・環境など複数の条件が関わります。気になる症状がある場合は皮膚科で相談しましょう。
Q. 更年期の脂漏性皮膚炎は更年期が終われば自然に治りますか?
A. 「更年期が終われば必ず治る」とは言いきれません。脂漏性皮膚炎は慢性的で再発しやすい性質があり、ホルモン以外の要因も関わるためです。症状が続く場合は、セルフケアと並行して医療機関で相談することをおすすめします。
Q. 乾燥しているのに脂っぽいのはなぜですか?
A. 更年期は肌バリアが低下して乾燥しやすくなる一方、皮脂のバランスが変わって部分的にテカりやすくなることがあります。乾燥と皮脂が混在する状態は珍しくありません。やさしい洗浄と保湿の両立を心がけてください。
Q. シャンプーを変えれば改善しますか?
A. 低刺激のシャンプーに変えることで頭皮環境が整いやすくなる場合はありますが、シャンプーだけで必ず改善するとは限りません。洗い方・生活習慣・症状の程度も影響します。改善しないときは皮膚科に相談してください。
Q. 市販薬を使ってもいいですか?
A. 軽度であればセルフケアの選択肢になりますが、症状に合わない薬を長期間使い続けると改善が遅れることがあります。使用しても2〜4週間で良くならない、悪化する場合は、自己判断を続けず受診してください。
Q. 食べ物で気をつけることはありますか?
A. 糖質・脂質に偏った食事や甘いものの摂りすぎは控え、ビタミンB群を含む食品をバランスよく取り入れるとよいと考えられています。ただし特定の食品で治るというものではなく、極端な食事制限は避けてください。
Q. 婦人科と皮膚科のどちらに行けばいいですか?
A. 肌の赤み・かゆみ・フケなど皮膚症状が中心なら皮膚科、ほてり・発汗・気分の落ち込みなど更年期症状がつらい場合は婦人科が目安です。両方が重なる場合は、まず受診しやすい方で相談し、必要に応じて連携してもらうとよいでしょう。
あなたの症状、セルフチェックしてみませんか?