脂漏性皮膚炎はなぜ治りにくいのか|完治と寛解の違いを薬剤師が解説

この記事の監修者

久保木彰一

久保木彰一

ワイズ製薬株式会社  薬剤師

昭和薬科大学薬学部薬学科卒業 。北京中医薬大学日本校卒業。薬剤師資格だけでなく国際中医薬膳師・調理師免許も保有。大手ドラッグストアーに勤務後、調剤薬局に勤務、神奈川県鎌倉市薬剤師会に所属し、在宅医療を中心に地域包括ケアの一員として活躍。その後、現職のワイズ製薬で化粧品及び健康食品の商品企画開発に従事。お客様の痛い・苦しいを取り除くために日々奮闘中です。プライベートでは二児の父で、育メンを目指しています。

書籍2026.06.03 公開 / 2026.07.01 更新
この記事の結論
脂漏性皮膚炎が治りにくいのは、原因の常在菌マラセチアを根絶できず、病院の治療が「対症療法」中心だからです。現実的な目標は「完治」ではなく症状のない「寛解」。シャンプー・生活習慣・通院の3つが重なれば改善は期待できます。

この記事の結論

  • 脂漏性皮膚炎が治りにくいのは、原因の常在菌マラセチアを根絶できず、病院の治療が対症療法中心だからだと考えられています。
  • 現実的な目標は「完治」ではなく症状のない「寛解」だとされています。
  • シャンプー・生活習慣・通院の3つが重なれば改善は期待できると考えられています。

こんな人に

  • 何年も繰り返してもう治らないのではと感じている方
  • 完治と寛解の違いを正しく知りたい方
  • 病院の治療を続けても再発を繰り返してしまう方
  • 寛解を目指すための具体的な取り組みを知りたい方

「治らない」と感じる本当の理由

この章の要点

根治をもたらす治療法が確立されておらず、原因が常在菌マラセチアの異常繁殖にあるため、菌を完全に取り除けないことが治りにくさの背景にあると考えられています。

脂漏性皮膚炎は、何年も繰り返すうちに「もう治らないのではないか」と感じやすい疾患です。中には10年・20年と付き合い続けている方もいます。その背景には、いくつかの構造的な理由があると考えられています。

第一に、脂漏性皮膚炎には現時点で根治をもたらす治療法が確立されていないこと。第二に、疾患そのものの認知度が低く、適切な情報にたどり着きにくいこと。そして第三に、直接の原因が皮膚の常在菌である「マラセチア真菌」の異常繁殖にあることです。

マラセチアはもともと誰の肌にもいる常在菌であり、完全に取り除くことはできません。常在菌が関与する疾患は一般に難治とされ、たとえば水虫(白癬菌)の治療に手こずるケースと同じような難しさがあります。原因菌をゼロにできない以上、症状とうまく付き合っていく視点が現実的だと考えられています。

完治と寛解はどう違う

この章の要点

完治は原因が取り除かれ再発の心配がない状態、寛解は原因は残るが症状がない・ごく軽微な状態を指し、脂漏性皮膚炎で現実的に目指せるのは一般的に寛解だと考えられています。

長く治療を続けるうえで、「完治」と「寛解」の違いを知っておくことはとても大切です。言葉が似ているため混同されがちですが、意味は大きく異なります。

完治とは

完治とは、病気の原因そのものが取り除かれ、完全に治った状態を指します。原因が消えているため、基本的に再発の心配がありません。

寛解とは

寛解とは、原因は体に残っているものの、症状が出ていない、またはごく軽微な状態を指します。原因が残っているため、条件が揃うと再び症状が出る(再燃する)可能性があります。脂漏性皮膚炎の治療で現実的に目指せるのは、一般的にこの「寛解」だと考えられています。

  完治 寛解
原因 取り除かれている 体に残っている
症状 完全に消えている ない、またはごく軽微
再発の可能性 基本的にない 条件が揃うとあり得る
脂漏性皮膚炎での位置づけ 現状は確立されていない 現実的に目指せる目標

病院の治療(対症療法)の限界

この章の要点

ステロイド外用や抗ヒスタミン内服は出ている症状をコントロールする対症療法であり、原因であるマラセチアを根本から解決するものではないと考えられています。

皮膚科での治療は症状をやわらげるうえで重要ですが、その多くは原因を根本から取り除くものではなく、「対症療法」が中心になると一般的にされています。ここを理解しておくと、治療の見通しが立てやすくなります。

ステロイド外用と抗ヒスタミン内服の役割と限界

病院の治療では、炎症を抑えるためのステロイド外用薬が中心に用いられることが一般的です。かゆみが強いときには、抗ヒスタミン薬の内服が併用されることもあります。

ただし、これらはあくまで出ている症状をコントロールするための対症療法であり、原因であるマラセチアそのものを根本から解決するものではないと考えられています。また、薬の効きやすさには体質による個人差があり、同じ薬でも人によって実感が異なる点にも注意が必要です。

抗ヒスタミン薬の内服では、眠気・便秘・集中力の低下などの副作用があらわれることがあるとされています。日常生活や仕事への影響が気になる場合は、自己判断で中断せず、処方した医師や薬剤師に相談することが大切です。

なぜ再発・再燃するのか

この章の要点

治療で得られるのは原因が残ったまま症状が落ち着いた寛解であり、菌が増えやすい条件が揃うと再び症状があらわれることがあると考えられています。

治療で症状が落ち着いても、しばらくしてまたぶり返してしまう——この「再発・再燃」に疲れてしまう方は少なくありません。その理由は、これまで述べてきた仕組みを踏まえると見えてきます。

治療で得られる状態は、原因が取り除かれた「完治」ではなく、原因が残ったまま症状が落ち着いた「寛解」です。原因であるマラセチアは肌に残り続けているため、皮脂の増加や生活リズムの乱れ、洗髪習慣など、菌が増えやすい条件が揃うと、再び症状があらわれることがあると考えられています。

つまり再発は「治療がうまくいっていない」という意味ではなく、原因菌をゼロにできない疾患の性質によるものと捉えるほうが現実的です。だからこそ、症状が出ていないときも油断せず、ケアを続けていく視点が重要になります。

寛解を目指す3本柱

この章の要点

シャンプー・ヘアケア、生活習慣、通院・投薬の3つが重なったとき、寛解の可能性が見えてくると考えられています。

脂漏性皮膚炎の改善には、生活習慣や洗髪の見直しと、通院・投薬を組み合わせた継続的な取り組みが必要だと一般的に考えられています。時間はかかりますが、諦めずに続けることで目に見える改善は期待できます。次の3つが重なったとき、寛解の可能性が見えてきます。

  • ①シャンプー・ヘアケア
    自分の頭皮や肌に合った洗い方・製品を見直し、過度な洗いすぎや汚れの残りを避けることが、菌が増えにくい環境づくりにつながると考えられています。
  • ②生活習慣
    睡眠・食事・ストレスといった生活リズムを整えることは、皮脂バランスや肌のコンディションを支える土台になるとされています。
  • ③通院・投薬
    症状が出ているときは自己判断に頼らず、皮膚科を受診して適切な治療を受けることが、悪化を防ぎ寛解へ近づく支えになります。
薬剤師・久保木彰一のひとこと
「何年も治らない」と感じている方の気持ちは痛いほど分かります。でも、原因の性質を理解して3つの柱を続けていけば、症状が落ち着く寛解は決して遠い目標ではありません。一人で抱え込まず、一緒に少しずつ進んでいきましょう。

市販薬の選び方はこちら:脂漏性皮膚炎の市販薬はどれを選ぶ?成分別の選び方と受診目安

基礎から知りたい方へ:脂漏性皮膚炎とは|症状・原因・治療とセルフチェックをわかりやすく解説

あわせて読みたい:薬剤師が考える脂漏性皮膚炎との向き合い方|寛解への現実的ロードマップ

あわせて読みたい:脂漏性皮膚炎の治し方「お薬について」

あわせて読みたい:薬剤師が教えるステロイド剤の正しい使い方

よくある質問

Q. 脂漏性皮膚炎は完治しますか?

A. 現時点では、原因を完全に取り除く根治的な治療法は確立されていないとされています。そのため目指すのは完治ではなく、症状が落ち着いた寛解が現実的な目標と考えられています。症状が続く場合は皮膚科で相談してください。

Q. 一生治らないのでしょうか?

A. 原因であるマラセチアをゼロにすることは難しいため、付き合いが長くなることはあります。ただし、適切なケアを続けることで症状のない寛解の状態を保つことは十分に期待できると考えられています。焦らず継続することが大切です。

Q. 再発を防ぐにはどうすればよいですか?

A. 症状が落ち着いた後も、シャンプー・生活習慣・通院の3つを意識して続けることが、再発・再燃を防ぐうえで大切だとされています。調子が良いときも油断しないことがポイントです。

Q. 市販薬だけで治りますか?

A. 市販のケア用品が役立つ場面もありますが、症状が続く・強い場合は自己判断に頼らず、医療機関での診断と治療を受けることがすすめられます。一般的に、セルフケアと通院は組み合わせて考えることが望ましいとされています。

Q. どれくらいで良くなりますか?

A. 改善には時間がかかることが多く、生活習慣の見直しと通院・投薬を継続的に組み合わせる必要があるとされています。期間には個人差があり、すぐに結果が出なくても焦らず続けていくことが大切だと考えられています。

Q. 何科を受診すればよいですか?

A. 一般的には皮膚科の受診がすすめられます。症状が長引く・繰り返す・強いといった場合は、自己判断せず早めに専門の医療機関に相談することが、悪化を防ぎ安心につながると考えられています。

Q. ステロイド外用や抗ヒスタミン薬で原因は治りますか?

A. これらは出ている症状をコントロールするための対症療法であり、原因であるマラセチアそのものを根本から解決するものではないと考えられています。抗ヒスタミン薬には眠気・便秘などの副作用があらわれることがあるとされ、気になる場合は自己判断で中断せず処方した医師や薬剤師に相談してください。

Q. なぜマラセチアは取り除けないのですか?

A. マラセチアはもともと誰の肌にもいる常在菌であり、完全に取り除くことはできないとされています。常在菌が関与する疾患は一般に難治とされ、原因菌をゼロにできない以上、症状とうまく付き合っていく視点が現実的だと考えられています。

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