2026年8月30日、脂漏性皮膚炎ナビを運営するワイズ製薬株式会社は、「かゆみのメカニズム勉強会 〜洗う・塗る・飲む 正しい知識で肌を守る〜」を開催しました。講師には、新中野皮膚科クリニックなべよこ院 院長で、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の大山香子先生をお迎えしました。
「なぜ、かゆいと分かっていても掻いてしまうのか」「飲み薬と塗り薬はそれぞれ何をしているのか」「脂漏性皮膚炎では毎日のケアをどう考えればよいのか」。当日はこうした身近な疑問について、かゆみの仕組みから日々のセルフケアまで解説していただきました。この記事では、勉強会で紹介された内容をもとに、特に重要なポイントをまとめます。
本勉強会の講師
大山 香子 先生
新中野皮膚科クリニックなべよこ院 院長 / 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、脂漏性皮膚炎などの治療に力を入れ、日常で無理なく続けられるスキンケアについても発信している。今回の勉強会で講師を務めた。
この記事でわかること
- そもそも「かゆみ」はなぜ起こるのか
- なぜ掻くことを我慢しにくいのか
- 「かゆい→掻く→さらにかゆい」という悪循環
- 飲み薬と塗り薬の役割
- 脂漏性皮膚炎で意識したい毎日のセルフケア
8月30日「かゆみのメカニズム勉強会」を開催しました
- 開催日
- 2026年8月30日
- 主催
- ワイズ製薬株式会社
- テーマ
- かゆみのメカニズム 〜洗う・塗る・飲む 正しい知識で肌を守る〜
- 講師
- 大山 香子 先生
新中野皮膚科クリニックなべよこ院 院長 / 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
勉強会は、司会進行のもと、大山先生への質問に答えていただく対話形式で進行しました。前半は「かゆみとは何か」「なぜ掻いてしまうのか」「飲み薬・塗り薬の役割」、後半は具体例として「脂漏性皮膚炎」と日常のセルフケアを取り上げました。
そもそも「かゆみ」とは?
勉強会ではまず、大山先生から「かゆみは、皮膚の異常などを知らせるSOSサインのようなもの」という説明がありました。皮膚のバリアが傷ついたり、虫やアレルギー物質などの異物が付着したときに、「ここにトラブルが起きていますよ」と脳に知らせてくれる防衛本能のひとつ、という位置づけです。
大山先生は、これを火災報知器にたとえて紹介しました。火災報知器が鳴るのは困ることではなく、危険を知らせてくれているのと同じで、かゆみも「何か起きているよ」という体からのサインだと考えられる、という説明です。まずはその役割を知ることが、正しい対処の第一歩になると話されていました。
なぜ分かっていても掻いてしまうのか
掻いてしまうのは「意志」だけの問題ではない
勉強会で大山先生が最初に強調したのは、「掻いてしまうのは意志が弱いからではない」という点でした。人の体は、そもそも我慢しにくいようにできている、という説明です。かゆみは「早く払いのけて」という体からの指令でもあり、私たちは本能的に掻く行動をとりやすい、と紹介されました。
さらに勉強会では、かゆいところを掻くと一時的にすっきり感じるのは、脳の仕組みが関係していると説明されました。掻くと脳から快感に関わる物質が出て、その行動が繰り返されやすくなる、という分かりやすい表現です。大山先生は「責めるよりも、仕組みを知って対策することが大切」と話されていました。
しつこいかゆみが起こる2つの考え方
勉強会では、しつこいかゆみを大きく2つのルートに分けて解説されました。1つ目はアレルギー・炎症に関連するルート、2つ目は、勉強会で理解しやすいよう「神経の伸びすぎルート」という表現で紹介された、皮膚のバリア低下などにより刺激に敏感になるルートです(この呼び方は、勉強会で分かりやすく用いられた比喩です)。
図①:しつこいかゆみの2つのルート
アレルギー・炎症
虫刺され・蕁麻疹・花粉など、原因物質への反応
バリア低下
↓刺激を感じやすくなる(乾燥・加齢・強い摩擦など)
大山先生によると、1つ目は虫刺されや蕁麻疹、花粉、食べ物など、はっきりした原因物質があるときに起こる反応です。2つ目は、外からの明確な原因がないのに肌が過敏になっているタイプで、乾燥する季節やお風呂上がりなどにムズムズする場合に多いと紹介されました。乾燥や強くこする洗い方などで皮膚のバリアが低下すると、わずかな刺激でも過敏に反応しやすくなる、という説明です。だからこそ、肌を清潔に保ちながらバリアを壊さない「洗う」ケアが基本になる、と話されていました。
脂漏性皮膚炎でかゆみが起こる仕組みについては、脂漏性皮膚炎でかゆみが起こる仕組みを詳しく見るもあわせてご覧ください。
「かゆい→掻く→さらにかゆい」の悪循環
勉強会で特に強調されたのが、掻くことで生じる悪循環です。かゆいから掻く、掻くと皮膚のバリアが傷つく、すると刺激に敏感になり、さらにかゆくなる——大山先生は、この流れを「イッチ・スクラッチ・サイクル」という言葉で紹介しました。
図②:かゆみの悪循環「イッチ・スクラッチ・サイクル」
勉強会では、頭では「掻いてはいけない」と分かっていてもやめにくい背景について、掻く行為が脳にとって一時的な満足につながりやすいことが、分かりやすく紹介されました(大山先生は「脳のハッキング」という比喩で表現していました)。少し掻いただけのつもりでも刺激でバリア機能が下がり、乾燥が進んで刺激が入りやすくなる。その結果、小さなかゆみがより広く強いかゆみへ広がってしまうことがある、という説明です。だからこそ、必要に応じて薬の力を正しく借りることが大切だと話されていました。
勉強会で解説された「洗う・塗る・飲む」
今回の勉強会の中心テーマが、この3つの考え方です。大山先生は、それぞれに異なる役割があると整理して紹介しました。
洗う
肌を清潔に保ちながら、必要以上に摩擦を与えないこと。バリアを守りつつ、かゆみの原因になりうる汚れや過剰な皮脂をやさしく落とすことが基本と説明されました。
塗る
炎症がある場合に、医師の診断に基づいて適切な外用治療を行うこと。すでに起きている炎症を鎮める役割として紹介されました。
飲む
症状や診断に応じて、医師が抗ヒスタミン薬などを使用する場合があること。無意識の掻きむしりによるかゆみの連鎖を、内側から起こしにくくする役割として説明されました。
なお、勉強会では「全員が飲み薬と塗り薬を使えばよい」という説明はされていません。どの治療を行うかは、症状・診断・その人の状態によって異なり、医師が診察して判断するものです。
塗り薬・飲み薬について紹介された内容
勉強会では、塗り薬・飲み薬について次のような話がありました。いずれも、医師が診察して判断する治療という位置づけで紹介されたものです。
- 飲み薬(抗ヒスタミン薬など):無意識の掻きむしりによって起こるかゆみの連鎖を、内側から起こしにくくする役割として説明されました。脂漏性皮膚炎と抗ヒスタミン薬の考え方もあわせてご覧ください。
- ステロイド外用薬:今起きている炎症を鎮める役割として紹介されました。塗り薬(外用)と飲み薬(内服)は性質が異なること、外用薬も医師が指示した量・期間を守ることが大切だと説明されました。
- 抗真菌外用薬:脂漏性皮膚炎の治療の文脈で、原因菌の増殖を抑える目的で用いられることがあると紹介されました。脂漏性皮膚炎と抗真菌外用薬についてもご参照ください。
具体的な薬剤の選択・用量・使う期間は、診察のうえ医師が判断します。本記事は治療法を指南するものではありません。
具体例としての「脂漏性皮膚炎」
勉強会の後半では、具体例として脂漏性皮膚炎が取り上げられました。大山先生は、頭皮や顔など皮脂の多い部位に、フケのようなものを伴った赤みが生じる皮膚炎で、かゆみを伴うことも多く、良くなったり悪くなったりを繰り返す傾向がある、と説明しました。発症しやすいのは顔まわりや頭部などで、日によってかゆい場所が変わるように感じることも珍しくない、と紹介されました。頭皮の症状については頭皮の脂漏性皮膚炎について詳しく見るもご覧ください。
脂漏性皮膚炎に関係すると考えられている要因
勉強会では、脂漏性皮膚炎には複数の要因が関わっていると考えられているとして、次の4つが紹介されました。単一の原因で決まるものではない、という説明です。
- マラセチア菌の関与:皮膚に常在する菌が皮脂を栄養に増え、皮脂を分解する際にできる刺激物質が炎症やフケに関わると考えられていること。マラセチア菌について詳しく見る
- 皮脂の分泌・成分:体質・性別・年齢などにより皮脂が多くなることや、皮脂成分の変化が関与すると考えられていること。
- 季節・乾燥・ビタミンなど:季節の変化や乾燥で肌のバリアが乱れやすくなること、ビタミンB群の不足が指摘されることもあること。
- 生活習慣・ストレスなど:睡眠不足や不規則な食生活、精神的なストレスなど、日々の乱れが引き金になりうること。
日常で意識したいセルフケア(Q&A)
勉強会の後半では、日常のセルフケアについてQ&A形式で具体的な話がありました。ここでは主なポイントを紹介します。
洗顔・入浴
皮脂汚れがたまると症状が悪化しやすいため、できるだけ毎日、洗顔・入浴を行うとよいと説明されました。ただし強くこすらないこと、洗浄成分が残らないよう十分にすすぐこと、洗浄後は保湿も考えることが大切だと紹介されました。
シャンプー
かゆみやフケを抑えるために定期的に洗うこと、ただしゴシゴシ洗わないこと、シャンプーの成分が残らないよう十分にすすぐこと、洗髪後はしっかり乾かすことが説明されました。爪を立てず指の腹で洗い、すすぎ残しを作らないことが一番のポイントと話されていました。シャンプー選びについては脂漏性皮膚炎のシャンプー選びについて詳しく見るもご参考に。
リンス・コンディショナー
リンスやコンディショナー、トリートメントは、頭皮ではなく毛先に必要量だけつけるようにするとよいと紹介されました。
整髪料
ワックスなどの整髪料を使って症状が悪化すると感じる場合は、使用を控えるのがよいこと。使う場合は頭皮につけず毛先にとどめること、帽子などは通気性のよいものを選ぶことが説明されました。
ヘアカラー・パーマ
パーマ液やヘアカラーは頭皮に強い刺激を与えるため、炎症が起きているときやしみるように感じるときは避けること、症状が落ち着いてから行うことが紹介されました。
かさぶた・フケ
かさぶたのようなものはフケが固まったものであることが多く、無理にはがさないことが大切だと説明されました。
プール・温泉
プールのあとは塩素をしっかり洗い流すこと、露天風呂などのあとも汚れをきれいに洗い流すことがすすめられました。
勉強会で伝えられた3つのポイント
かゆみには理由がある(体を守るサインでもある)
掻くことで悪循環が起こる場合がある
自己判断だけに頼らず、正しい洗浄と、必要に応じた医療を組み合わせる
勉強会の最後にも、「洗う・塗る・飲む」という3つの考え方が改めてまとめられました。大山先生は、なかでも日々の「洗う」ケアを続けることの大切さを繰り返し話されていました。
※本記事は、2026年8月30日に開催された「かゆみのメカニズム勉強会」の内容をもとに、一般的な情報提供を目的として編集したものです。診断・治療に代わるものではありません。
かゆみ、赤み、フケなどの症状が続く場合や、症状が強い場合は、自己判断で治療せず皮膚科などの医療機関にご相談ください。
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