この記事の監修者
大山 香子
新中野皮膚科クリニックなべよこ院 院長
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。 日本皮膚科学会,日本美容皮膚科学会,日本アレルギー学会所属 東京医科大学病院皮膚科兼任助教,Bio Touch JAPAN顧問医師 東京医科大学卒業後,東京医科大学病院皮膚科へ勤務し皮膚科,美容皮膚科の経験を積んでいる。 現在は主に新中野皮膚科クリニックなべよこ院院長として皮膚科,美容皮膚科,アレルギー科診療に携わる傍ら,美容医療に関する記事の監修を行う。
マラセチア菌とは、皮膚に常在する真菌(カビ)の一種で、皮脂を栄養源として誰の肌にもすみついている菌です。健康な肌でも存在しますが、皮脂の過剰分泌や高温多湿などで増えすぎると、脂漏性皮膚炎をはじめとする皮膚トラブルに関わることがあります。本記事では、マラセチア菌と脂漏性皮膚炎の関係、増えやすい条件、日常のケアと洗い方、受診を検討すべきサインまでを、皮膚科専門医・薬剤師監修のトーンでわかりやすく整理します。
この記事の結論
- マラセチア菌とは、皮脂を栄養源として誰の肌にも常在する真菌の一種です。
- 皮脂の過剰分泌や高温多湿などで増えすぎると、脂漏性皮膚炎などの皮膚トラブルに関わることがあるとされています。
- ゼロにするのではなく、やさしく洗い清潔で乾いた状態を保ち、増えすぎを防ぐケアが基本です。
こんな人に
- マラセチア菌とは何かを知りたい
- マラセチア菌と脂漏性皮膚炎の関係を整理したい
- 菌が増えやすい条件や正しい洗い方を知りたい
- 受診を検討すべきサインを確認したい
マラセチア菌とは(皮膚の常在菌)
皮脂を栄養源としてほぼすべての人の皮膚に常在する真菌の一種です。悪い菌ではなく、増えすぎたときにだけトラブルに関わるとされ、完全に取り除くのではなく上手に付き合う対象と説明されます。
マラセチア菌(Malassezia)とは、ヒトの皮膚に常在する真菌(カビ)の一種で、皮脂を栄養源として生育します。新生児期以降、ほぼすべての人の皮膚にすみついており、頭部・顔・胸・背中など皮脂腺の多い部位に多く分布します。皮膚にすむ無数の常在菌(皮膚マイクロバイオーム)の一員として、ふだんはバランスを保ちながら共存しています。
マラセチア菌は皮脂を分解する性質を持ち、皮膚の環境づくりに関与していると考えられていますが、その働きにはまだ解明されていない部分も多くあります。重要なのは、マラセチア菌は「悪い菌」ではなく、誰の肌にもいる常在菌であり、増えすぎたときにだけトラブルに関わるという点です。完全に取り除くものではなく、上手に付き合う対象だと理解しておきましょう。
マラセチア菌の特徴(早見表)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 真菌(カビ)の一種。皮膚常在菌 |
| 栄養源 | 皮脂(特に脂肪酸・トリグリセリド) |
| 多い部位 | 頭皮・顔(鼻まわり・眉間)・胸・背中など皮脂の多い部位 |
| 増えやすい条件 | 皮脂の過剰分泌・高温多湿・汗の放置・生活習慣の乱れ |
| 関わる主な疾患 | 脂漏性皮膚炎・マラセチア毛包炎・癜風 など |
| 付き合い方 | 完全除去は困難。増えすぎを防ぐコントロールが基本 |
マラセチア菌と脂漏性皮膚炎の関係
皮脂が増えるとマラセチアが増えやすくなり、菌が皮脂を分解する過程で生じる物質が皮膚を刺激して赤み・かゆみ・フケにつながるとされます。いること自体ではなく、増殖と炎症反応が重なったときに症状としてあらわれると説明されます。
脂漏性皮膚炎は、皮膚の常在菌であるマラセチア菌の増殖と、それに対する皮膚の炎症反応が関わって起こる慢性的な皮膚の炎症と考えられています。皮脂が多くなるとそれを栄養にするマラセチア菌が増えやすくなり、菌が皮脂を分解する過程で生じる物質(遊離脂肪酸など)が皮膚を刺激し、赤み・かゆみ・フケといった症状につながるとされています。
ポイントは、マラセチア菌が「いること」自体が問題なのではないということです。健康な状態ならマラセチア菌が皮膚にいても症状は出ません。皮脂の増加などをきっかけに菌のバランスが崩れ、増殖と炎症反応が重なったときに、脂漏性皮膚炎の症状としてあらわれると理解するとわかりやすいでしょう。脂漏性皮膚炎の全体像については脂漏性皮膚炎とは、原因の詳しい解説は脂漏性皮膚炎の原因もあわせてご覧ください。
マラセチア菌が関わるその他の皮膚疾患
マラセチア菌の増殖は、脂漏性皮膚炎以外にも次のような皮膚トラブルに関わることがあります。いずれも症状が似た別の病気と見分けにくいことがあるため、気になる場合は皮膚科での確認がすすめられます。
- マラセチア毛包炎:毛穴の奥でマラセチア菌が増えすぎて炎症を起こすもの。ニキビに似た赤いブツブツができますが、大きさがそろっていてかゆみを伴いやすいのが特徴です。原因菌が異なるため、一般的なニキビ向けのケアでは変化が出にくいことがあります。
- 癜風(でんぷう):胸・背中・首・脇など汗をかきやすい部位に、薄い茶色・ピンク・白色の斑点が複数あらわれるもの。痛みやかゆみがほとんどなく、気づかないうちに広がることがあります。
- マラセチアへの反応(体質によるもの):マラセチア菌は誰の肌にもいる菌ですが、体質によっては反応が強く出る人もいると考えられています。皮膚のバリア機能の低下などが関わるとされますが、詳しい仕組みは研究段階です。
マラセチア菌が増えやすい条件
皮脂の過剰分泌、高温多湿・汗の放置、洗いすぎや強くこする洗い方、洗髪後に乾かさないこと、生活習慣の乱れなどが、増えやすい条件として挙げられます。
マラセチア菌の増殖はさまざまな要因が重なって起こります。脂漏性皮膚炎などを防ぎたい場合は、菌が増えやすい以下の条件を知り、生活の中で減らしていくことが大切です。脂漏性皮膚炎の原因の記事もあわせて参考にしてください。
1. 皮脂の過剰分泌
マラセチア菌は皮脂を栄養源とするため、皮脂が多い環境ほど増えやすくなります。皮脂の分泌は、男性ホルモンの影響・思春期・食生活の乱れ・ストレス・睡眠不足などで増えやすくなるとされています。脂質や糖質に偏った食事を控え、生活リズムを整えることが、皮脂のコントロールにつながります。
2. 高温多湿・汗の放置
マラセチア菌は高温多湿の環境を好みます。汗をかいたまま放置すると皮膚表面の湿度が上がり、菌が繁殖しやすい状態になります。汗の成分が刺激となって炎症を悪化させることもあります。特に夏場や運動後は、こまめに汗を拭く・早めにシャワーで洗い流すなどして、清潔で通気性の良い状態を保ちましょう。
3. 洗いすぎ・強くこする洗い方
清潔にしようとして強くこすると、かえって肌にダメージを与えて炎症のもとになります。皮脂を落としすぎると肌が乾燥し、肌は不足を補おうとして皮脂を多く分泌することがあります。結果として皮脂が増え、マラセチア菌が増えやすくなる悪循環につながります。「ゴシゴシ洗う」より「やさしく洗う」が基本です。
4. 洗ったあとに乾かさない
洗髪後や入浴後に濡れたまま放置すると、水分と皮脂が混ざって菌の栄養になり、頭皮や肌で菌が増えやすくなります。髪は自然乾燥に時間がかかるため、ドライヤーで早めに乾かす習慣をつけ、皮膚を清潔で乾いた状態に保ちましょう。
5. 生活習慣・体調の乱れ
睡眠不足・偏った食事・ストレス・疲労などは、皮脂分泌の増加や皮膚のコンディション低下につながり、結果的に菌のバランスを崩す要因になり得ます。マラセチア菌そのものを直接コントロールするというより、皮脂と皮膚環境を整えることが、増えすぎを防ぐ土台になります。
医療機関での対応(一般的な情報)
医師の判断で抗真菌成分を含む外用薬や、炎症へのステロイド外用薬が用いられることがあるとされます。使用の可否や期間は医師が決めるもので、自己判断での使用や中止は避けることが大切と説明されます。
脂漏性皮膚炎やマラセチアが関わる皮膚疾患では、医療機関で次のような対応がとられることがあります。以下はあくまで一般的な情報であり、実際の診断・治療は医師の判断によります。
- 抗真菌の考え方:マラセチア菌は真菌のため、医師の判断で抗真菌成分を含む外用薬などが用いられることがあります。使用の可否・種類・期間は医師が症状に応じて決めるものです。
- 炎症への対応:赤みやかゆみなどの炎症に対して、医師の判断でステロイド外用薬などが併用されることがあります。塗り方やタイミングは状態によって変わるため、自己判断での使用や中止は避け、指示に従うことが大切です。
- 合併への配慮:マラセチア毛包炎と通常のニキビなど、原因の異なるトラブルが混在することもあり、塗り分けやケアのバランスが必要になる場合があります。
日常のケアと正しい洗い方
やさしく洗う・すすぎ残しをなくす・洗ったらすぐ乾かす・汗はこまめに対処する・シャンプー選びを見直す・生活習慣を整えるなど、増えすぎを防ぐ日常ケアが紹介されています。
マラセチア菌は常在菌のため、「ゼロにする」のではなく「増えすぎを防ぐ」ことが日常ケアの基本です。皮脂をためすぎず、皮膚を清潔で乾いた状態に保つことを意識しましょう。
- やさしく洗う:爪を立てず、指の腹で泡をなじませるように洗います。強くこすらないことが大切です。
- すすぎ残しをなくす:洗浄成分や皮脂が残らないよう、ぬるま湯でしっかりすすぎます。
- 洗ったらすぐ乾かす:濡れたまま放置せず、ドライヤーで早めに乾かします。
- 汗はこまめに対処:汗をかいたら拭く・洗い流す。通気性のよい衣類を選びます。
- シャンプー選びを見直す:油分の多いシャンプーは皮脂と同様に菌の栄養になりやすいため、皮脂が気になる人はオイルフリーや低刺激のものを検討します。シャンプーの選び方は脂漏性皮膚炎とシャンプーを参考にしてください。
- 生活習慣を整える:睡眠・食事・ストレスケアで皮脂のコントロールを助けます。
頭皮の症状が気になる方は頭皮の脂漏性皮膚炎、毎日の過ごし方のヒントは脂漏性皮膚炎のセルフケアもあわせてご覧ください。
やってはいけない誤ったケア
ゴシゴシ強く洗う、皮脂を完全に落とそうとする、濡れたまま放置する、自己判断で市販薬を長期使用する、原因の違うケアを続けることは、かえって悪化につながりうると注意喚起されています。
良かれと思って行うケアが、かえってマラセチア菌の増殖や炎症の悪化につながることがあります。次の点に注意しましょう。
- ゴシゴシ強く洗う・1日に何度も洗う:肌のバリアを傷つけ、乾燥と皮脂の過剰分泌を招きます。
- 皮脂を完全に落とそうとする:皮脂の取りすぎは逆効果になりがちです。
- 濡れたまま放置する:湿った環境は菌が増える条件になります。
- 自己判断で市販薬を長期使用する:合わない成分を使い続けると改善が遠のくことがあります。迷ったら医師・薬剤師に相談を。
- 原因が違うケアを続ける:ニキビだと思っていたものがマラセチア毛包炎のことも。変化が乏しいときは原因の見直しを。
受診を検討すべきサイン
症状が2週間以上続く・繰り返す、市販品で変化が乏しい・悪化している、ブツブツや斑点が広がる、かゆみが強く生活に支障がある、抜け毛などの変化が気になる場合は、皮膚科の受診がすすめられます。
マラセチア菌が関わる皮膚トラブルは、見た目が似た別の病気と区別しにくいことがあります。次のようなときは、自己判断を続けず皮膚科の受診を検討しましょう。
- 赤み・かゆみ・フケなどの症状が2週間以上続く、または繰り返す
- セルフケアや市販品を試しても変化が乏しい、または悪化している
- 胸・背中・顔などにブツブツや斑点が広がってきた
- かゆみが強く、日常生活や睡眠に支障がある
- 抜け毛・脱毛など、頭皮の状態の変化が気になる
症状が当てはまるか確認したい方は脂漏性皮膚炎のセルフチェックも活用してください。脂漏性皮膚炎との向き合い方の全体像は脂漏性皮膚炎の向き合い方で解説しています。
よくある質問
Q. マラセチア菌は誰にでもいるのですか?
A. はい。マラセチア菌は皮膚に常在する真菌で、ほぼすべての人の肌にすみついています。いること自体は異常ではなく、増えすぎたときにトラブルに関わると考えられています。
Q. マラセチア菌を完全になくせば脂漏性皮膚炎は起きませんか?
A. マラセチア菌は常在菌のため、完全に取り除くことは難しく、また皮膚の環境維持にも関わると考えられています。ゼロにするのではなく、皮脂や皮膚環境を整えて増えすぎを防ぐことが基本的な考え方です。症状が続く場合は医療機関にご相談ください。
Q. マラセチア菌が増える主な原因は何ですか?
A. 皮脂の過剰分泌、高温多湿、汗の放置、洗いすぎや強くこする洗い方、洗髪後に乾かさないこと、生活習慣の乱れなどが、増えやすい条件として挙げられます。
Q. マラセチア毛包炎とニキビはどう違いますか?
A. 見た目は似ていますが、マラセチア毛包炎はマラセチア菌、一般的なニキビはアクネ菌が主に関わるとされ、原因が異なります。毛包炎はブツブツの大きさがそろい、かゆみを伴いやすい傾向があります。混在することもあるため、見分けには皮膚科の診断がすすめられます。
Q. 市販のシャンプーや薬で対応できますか?
A. 皮脂が気になる場合はオイルフリーや低刺激のシャンプーを選ぶなどのセルフケアが役立つことがあります。市販品の成分は働きが異なるため、選び方に迷うときや症状が続くときは、医師・薬剤師に相談しましょう。
Q. 赤ちゃんにもマラセチア菌は関係しますか?
A. はい。赤ちゃんにもマラセチア菌は常在します。乳児期は皮脂量の変化に伴って菌数が変わり、乳児脂漏性皮膚炎としてあらわれることがあります。気になる症状があれば小児科・皮膚科にご相談ください。
Q. どのくらい症状が続いたら受診すべきですか?
A. 目安として、赤み・かゆみ・フケなどが2週間以上続く、繰り返す、悪化する場合や、セルフケアで変化が乏しい場合は、皮膚科の受診を検討してください。
Q. マラセチア菌は除菌すれば治りますか?
A. マラセチアは本来だれの肌にもいる常在菌で、完全に取り除くことはできないとされています。ゼロにするより、皮脂をためすぎない・やさしく洗うなど、菌が増えにくい頭皮環境を保つことが現実的と考えられています。
脂漏性皮膚炎に関する生活者意識・行動調査では、自己判断による「菌対策」や洗浄を強めるケアについても調査しています。
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