「脂漏性皮膚炎のかゆみはヒスタミンのせい?」「アレルギーと同じ?」と気になる方に向けて、この記事ではヒスタミンとかゆみの関係を、基礎からやさしく解説します。あわせて、ヒスタミン以外の経路についても整理します。
ヒスタミンは、かゆみを伝える物質のひとつですが、脂漏性皮膚炎のかゆみをヒスタミンだけで説明することはできません。ヒスタミンを介さない経路(非ヒスタミン性そう痒)も関わると考えられています。[2,3]
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療の代替となるものではありません。強い赤み・痛み・膿・急速な悪化・眠れないほどのかゆみがある場合は、自己判断せず皮膚科を受診してください。
この記事の要点
- ヒスタミンは、肥満細胞などから放出され、かゆみを伝える物質のひとつです。
- かゆみを伝える経路には、ヒスタミン性と非ヒスタミン性があります。
- 脂漏性皮膚炎のかゆみは、ヒスタミンだけでは説明できないと考えられています。
- 掻くと炎症とかゆみの悪循環(itch-scratch cycle)が進みやすくなります。
- 非ヒスタミン性の経路も関わるため、抗ヒスタミン薬だけでは十分でないことがあります。
こんな人に
- 脂漏性皮膚炎のかゆみとヒスタミンの関係を知りたい方
- 「かゆみ=アレルギー(ヒスタミン)」だと思っていた方
- 抗ヒスタミン薬があまり効かない理由を知りたい方
- 掻くとなぜ悪化するのか、その仕組みを理解したい方
脂漏性皮膚炎のかゆみが起こる全体的な仕組みは「脂漏性皮膚炎のかゆみはなぜ起こる?」で解説しています。あわせてお読みください。
ヒスタミンとは
ヒスタミンとは、体内の肥満細胞(マストセル)などから放出され、皮膚のH1受容体を介してかゆみや赤みに関わる物質です。
ヒスタミンとは、体内に広く存在し、かゆみ・赤み・血管の拡張などに関わる物質です。皮膚では、主に肥満細胞(マストセル)と呼ばれる細胞から放出されます。[1]放出されたヒスタミンが皮膚のH1受容体(ヒスタミンを受け取るスイッチのような部分)に結びつくと、かゆみの信号が神経を通じて脳に伝わると考えられています。[1]
H1受容体とは、ヒスタミンが結びつく受け皿のひとつで、かゆみに深く関わります。抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)は、このH1受容体をブロックしてかゆみをやわらげる薬です。
ヒスタミンはどうやってかゆみを起こす?
肥満細胞から放出されたヒスタミンがH1受容体に結びつき、かゆみを伝える神経を通じて脳に信号が伝わることで、かゆみを感じると考えられています。
ヒスタミンによるかゆみは、次のような流れで起こると考えられています。肥満細胞からヒスタミンが放出され、皮膚のH1受容体に結びつき、かゆみを伝える神経(そう痒神経)を通じて脳に信号が届く、という流れです。[1]蕁麻疹(じんましん)のように、この経路が中心となるかゆみでは、抗ヒスタミン薬が効きやすい場合があります。

かゆみにはヒスタミン以外の経路もある
かゆみを伝える経路はヒスタミンだけではありません。ヒスタミンを介さない経路(非ヒスタミン性そう痒)があり、慢性のかゆみでは特に重要と考えられています。
そう痒とは、皮膚を掻きたくなる不快な感覚のことです。かゆみを伝える経路には、ヒスタミンが中心となる経路のほかに、ヒスタミンを介さない経路(非ヒスタミン性そう痒)があることが知られています。[2,3]とくに慢性のかゆみでは、非ヒスタミン性の経路や、炎症に関わるさまざまな物質(メディエーター)が関与すると報告されています。[2,3]

このため、慢性の炎症性皮膚疾患のかゆみは、抗ヒスタミン薬だけでは十分におさまらないことがあると考えられています。[3,4]脂漏性皮膚炎における抗ヒスタミン薬の役割は「脂漏性皮膚炎に抗ヒスタミン薬は効く?」でくわしく解説しています。
脂漏性皮膚炎のかゆみとヒスタミンの関係
脂漏性皮膚炎のかゆみは、ヒスタミンが関わる可能性はあるものの、それだけで説明できるものではありません。皮脂・マラセチア・炎症・皮膚バリアの低下など複数の要因が関与すると考えられています。
脂漏性皮膚炎のかゆみに、ヒスタミンがまったく関係しないわけではありません。しかし「脂漏性皮膚炎=ヒスタミンが原因」と単純化することもできません。脂漏性皮膚炎のかゆみには、皮脂・マラセチア菌・炎症・皮膚バリアの低下など複数の要因が関わると考えられており、ヒスタミン以外の経路も関与する可能性があります。[2,3]
つまり、脂漏性皮膚炎のかゆみは「ヒスタミンだけ」でも「完全に非ヒスタミン性」でもなく、複数の仕組みが関わりうる、という理解が実際的です。
掻くとなぜ悪化する?(かゆみの悪循環)
掻くと皮膚が傷つき、炎症と皮膚バリアの低下が進んで、かえってかゆみが強くなる悪循環(itch-scratch cycle)が起こりやすくなります。
かゆくて掻くと、一時的にはすっきりしても、皮膚が傷つき炎症が進みます。すると皮膚バリアがさらに低下し、いっそうかゆくなる——という悪循環(itch-scratch cycle)が起こりやすくなると報告されています。[5]この悪循環を断つために、掻かない工夫(爪を短く保つ・冷やす・刺激を減らす)が大切とされています。無意識に掻いてしまう場合は、医師に相談してください。
受診の目安
かゆみが強い・長引く・市販薬で改善しないときは、自己判断を続けず皮膚科の受診を検討してください。
次のようなときは、皮膚科の受診をおすすめします。
- 赤み・かゆみが強い、ジュクジュクしている、出血している
- 強い痛み・膿がある、急速に悪化している、広範囲に広がっている
- 市販薬やセルフケアを続けても改善しない、または悪化している
- 眠りを妨げるほどの強いかゆみが続いている
よくある質問
Q. 脂漏性皮膚炎のかゆみはヒスタミンが原因ですか?
A. ヒスタミンが関わる可能性はありますが、それだけが原因とは言えません。脂漏性皮膚炎のかゆみには皮脂・マラセチア・炎症・皮膚バリアの低下など複数の要因が関わり、ヒスタミンを介さない経路も関与すると考えられています。「ヒスタミンだけ」では説明できないのが実際です。
Q. 脂漏性皮膚炎はアレルギーですか?
A. 脂漏性皮膚炎は、蕁麻疹のような一般的な即時型アレルギーと同一ではありません。かゆみの仕組みも、ヒスタミンが中心のアレルギー反応とは異なる部分があります。かゆみが強い場合は、他の病気の可能性も含めて皮膚科で確認することがすすめられます。
Q. 抗ヒスタミン薬が効かないのはなぜですか?
A. かゆみにはヒスタミンを介さない経路(非ヒスタミン性そう痒)も関わるためです。慢性の炎症性皮膚疾患のかゆみは、抗ヒスタミン薬だけでは十分でないことがあると考えられています。まずは炎症や皮膚環境を整える基本の治療・ケアが大切です。
Q. 肥満細胞(マストセル)とは何ですか?
A. 皮膚などに存在する細胞で、刺激を受けるとヒスタミンなどの物質を放出します。放出されたヒスタミンがかゆみや赤みに関わると考えられています。ただし、かゆみは肥満細胞・ヒスタミンだけで決まるわけではありません。
Q. 掻くとどうしてかゆみが強くなるのですか?
A. 掻くと皮膚が傷つき、炎症と皮膚バリアの低下が進むためです。これがさらにかゆみを強め、掻く→悪化→さらにかゆい、という悪循環になりやすいと報告されています。爪を短く保つ、冷やすなど掻かない工夫が役立ちます。
Q. ヒスタミンを減らす食べ物でかゆみは治りますか?
A. 特定の食べ物で脂漏性皮膚炎のかゆみが治るという確かな根拠はありません。脂漏性皮膚炎のかゆみは皮脂・マラセチア・炎症など複数の要因が関わるため、食事だけで解決しようとせず、必要に応じて皮膚科で相談することがすすめられます。
参考文献
- Shim WS, Oh U. Histamine-induced itch and its relationship with pain. Mol Pain. 2008;4:29. PMID: 18667087. PMC2519061
- Davidson S, Giesler GJ. The multiple pathways for itch and their interactions with pain. Trends Neurosci. 2010;33(12):550-558. PMID: 21056479. PMC2991051
- Yosipovitch G, Rosen JD, Hashimoto T. Itch: From mechanism to (novel) therapeutic approaches. J Allergy Clin Immunol. 2018;142(5):1375-1390. PMID: 30409247. PubMed
- Yosipovitch G, Bernhard JD. Chronic pruritus. N Engl J Med. 2013;368(17):1625-1634. PMID: 23614588. PubMed
- Rinaldi G. The Itch-Scratch Cycle: A Review of the Mechanisms. Dermatol Pract Concept. 2019;9(2):90-97. PMID: 31106010. PMC6502296
本記事は医学文献および公的情報をもとに編集部が作成しています。医師監修完了後、監修者情報を掲載します。
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