日本と海外での発症率
わが国では皮膚科を受診した患者の2~3%に本症が認められる。アメリカでは、人口比1~3%と報告されている。
参照:脂漏性皮膚炎 -臨床症状と各種外用剤の治療効果-
上記、記載の通り日本では皮膚科を受診した患者の2~3%程度に対して、アメリカでは人口に対して1~3%とされている。参照論文は2003年時点での数値であるが、2003年時点でのアメリカ人口は約2.9億人で最大数の3%を掛けると約870万人が脂漏性皮膚炎ということになる。近年でも脂漏性皮膚炎は日本、アメリカともに増加傾向が報告されている。
2003年時点での日本の皮膚科を受診した患者数は公表されていないため、比較は難しいが母数の大きさからアメリカと日本では、アメリカの方が脂漏性皮膚炎に悩んでいる可能性が非常に高い。
治療法の選択肢とアプローチ
ステロイド外用薬の慎重な使用
日本では、ステロイド外用薬は主要な治療薬ですが、特に乳幼児に対してはマイルドなランクのものが選ばれるなど、長期使用による副作用への配慮がより強調される傾向があります。
抗真菌薬のスタンダード
イミダゾール系の抗真菌外用薬(例:ニゾラール)が広く使われます。
内服薬のバリエーション
特徴的なのは、ビタミンB2・B6、ビタミンH(ビオチン)などのビタミン剤の内服が積極的に用いられる点です。これらは皮脂の分泌を調整したり、皮膚の代謝を助けたりする役割が期待されます。
漢方薬の活用
さらに、漢方薬(例:十味敗毒湯、荊芥連翹湯、黄連解毒湯など)が補助的に処方されることも珍しくありません。これは、身体の内側からバランスを整えるという東洋医学的な思想が根付いているため、西洋医学の治療と並行して「体質改善」を目指すアプローチが取られることが多々あります。
幅広い抗真菌成分の利用
ケトコナゾール、シクロピロックス、硫化セレン、ピリティオン亜鉛など、多様な抗真菌成分を含むシャンプーやローション、クリームが処方薬としても市販薬としても広く利用されています。特に市販薬の選択肢が豊富で、患者さんが自分で症状に合わせて試しやすい環境にあると言えるでしょう。
ステロイド外用薬とカルシニューリン阻害薬
ステロイド外用薬も主要な治療薬ですが、非ステロイド性抗炎症薬であるカルシニューリン阻害薬(タクロリムス、ピメクロリムス)も選択肢の一つとして挙げられます。ただし、これらについては長期使用に関する懸念から、医師との十分な相談が必要です。
経口薬の積極的な検討
外用薬で効果が不十分な場合や広範囲に症状が出ている場合には、経口の抗真菌薬が比較的早期に検討されることがあります。
食事療法の概念
酵母除去食や抗炎症食など、特定の食事療法が脂漏性皮膚炎の改善に役立つという概念が、日本よりも明確に提唱され、患者さんへの情報提供も盛んに行われている印象です。
医療制度と専門医へのアクセス

医療制度の違いは、患者さんが皮膚科を受診し、治療を受ける「道のり」に大きな影響を与えます。
- 国民皆保険制度: 日本では全ての国民が何らかの公的医療保険に加入しており、医療費の自己負担割合が低く抑えられています(通常3割)。
- フリーアクセス: 患者は原則として、自由に医療機関(皮膚科クリニックや総合病院など)を選んで受診できます。紹介状なしでも専門医を受診できるため、脂漏性皮膚炎の症状が出た際に比較的早期に専門医の診察を受けることが可能です。
- 多様な保険制度: アメリカでは、民間医療保険が主流であり、保険の種類、加入プラン、居住地域、個人の経済状況によって、医療サービスの受けやすさに大きな差があります。
- 高額な医療費: 医療費が高額になりがちで、保険に加入していても高額な自己負担が発生するケースがあります。これが、皮膚科受診への障壁となることがあります。
日本とアメリカの大きな違いは、気軽に近所の皮膚科を受診できるか、そうでないかといった点です。
日本では、患者さんが『ちょっと肌の調子が悪いな』と感じたら、気軽に近所の皮膚科を早期に診断・治療を開始できるため、症状の悪化を防ぎやすいと言えるでしょう。
一方、アメリカでは、皮膚科を受診するまでに、まずかかりつけ医の診察を受け、そこから専門医の紹介を待つといったプロセスが必要になる場合があります。また、保険の適用範囲によっては高額な自己負担が発生するため、症状が軽いうちは市販薬で様子を見る、という選択をする患者さんも少なくありません。
まとめ
脂漏性皮膚炎の治療において、日本とアメリカは共通の「武器」を持ちながらも、その使い方や、それに付随するサポート体制において独自の「文化」を育んできました。
日本は、保険制度による高い医療アクセスを背景に、西洋医学と伝統医療を融合させた多角的なアプローチを提供し、患者さんの体質や生活習慣全体を考慮した治療を重視する傾向があります。
一方アメリカは、多様な市販薬の選択肢とセルフケアの推進、そして食事療法のような代替アプローチへの積極的な情報提供を通じて、患者さんがより主体的に治療に参加できる環境を提供していると言えるでしょう。
どちらの国でも、患者さんの症状を改善し、QOL(生活の質)を向上させるという最終目標は同じです。私たち皮膚科医は、それぞれの国の特性を理解しつつ、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供できるよう努めています。
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日本とアメリカ、どちらの国でも、脂漏性皮膚炎の治療の「主役」は、炎症を抑えるステロイド外用薬と、原因菌であるマラセチア菌を抑える抗真菌薬です。これは、畑の雑草(マラセチア菌)を枯らし、荒れた土壌(炎症)を鎮める、という基本的な戦略に変わりはありません。